2015年は「動画サービス元年」と呼ばれ、動画配信(VOD)市場の競争も激しくなっていますが、サービスごとに何が違うの?と悩んでいる方も多いと思います。VODだ、PPVだと聞き慣れない専門用語に頭を抱えている人も多いでしょう。
この記事では「VODとは何か?」からはじめ、動画配信サービスを課金形態から「AVOD」「SVOD」「PPV」の3つに分類し、それぞれの特徴や違いについて解説していきます。
VODとは?
VOD(ヴイ・オー・ディー)とは「Video On Demand(ビデオ・オン・デマンド)」の略で、分かりやすく言うとネットを通して映像(動画)を視聴する仕組みやサービスのことです。巷では「VOD=定額動画配信サービス」として使われることもありますが、正式には定額動画配信サービスはVODサービスの1つの「SVOD」です。
日本ではTSUTAYA、GEOなどのDVDのレンタルショップが1989年にピークを迎えました。その後、インターネットの普及により「オンラインDVDレンタル」や「DVDのEC」などが隆盛を極めました。そして現在、映像サービスのスタンダードに取って変わったのがVODと言えます。VOD時代になった現在でも、サービスは形を変え、よりユーザーが利用しやすいように進化しています。
今回はVODのサービス形態を大きく「AVOD」「SVOD」「EST」「TVOD」に分類して説明します。
AVOD~広告型動画配信~
AVOD(エー・ヴイ・オー・ディー)とは「Advertising Video On Demand(アドバタイジング・ビデオ・オン・デマンド)」の略で、日本語で言うと広告動画配信です。広告を掲載することで、無料で動画が視聴できる動画配信の形態です。いわゆる動画共有サイトのほとんどがこの形態に当てはまります。
収益は上げているのは動画を観るユーザーからではなく、広告を出す企業からです。最も有名な動画サイト「YouTube」も、無料で動画が観れる代わりに、動画の前や途中に広告動画が流れます。今では視聴回数を稼げる投稿者に広告収益の一部を還元することで「YouTuber」という動画を投稿することで生計を立てる存在が生まれました。
映像コンテンツを無料で配信して、スポンサーから広告費で収益を上げるというのは、テレビでも採用されている一般的なビジネスモデルと言えます。
SVOD~定額動画配信~
SVOD(エス・ヴイ・オー・ディー)とは「Subscription Video On Demand(サブスクリプション・ビデオ・オン・デマンド)」の略で、定額動画配信の意味です。2012年ごろから動画配信サービスが注目を集めているのは、この定額制の料金形態を採用した「hulu」や「Netflix」といったサービスが増えたためです。
月額料金を払えば、用意されているコンテンツを何本観ても料金が変わりません。なので、さまざまな動画を料金を気にせず楽しみたい方にオススメです。
差別化のために、各社でオリジナルコンテンツの制作競争や、独占配信競争が激化しているのも特徴です。ダウンロード(キャッシュ保存)できるサービスであれば、スマホなどに保存してオフラインでも視聴できます。
PPV~都度課金~
PPV(ピー・ピー・ヴイ)とは「Pay Per View(ペイ・パー・ビュー)」の略で、作品ごとの都度課金システムの意味です。
もとはケーブルテレビや衛星放送の課金システムとして使われていましたが、現在では多くのSVODにも採用されています。PPVの中にも買い切り型である「EST」とレンタル型である「TVOD」があります。
EST~買い切り型動画配信~
EST(イー・エス・ティー)とは「Electric Sell-Through(エレクトリック・セル・スルー)」の略で、ネット上でメディアファイルを購入するサービス形態です。元々は、コンテンツファイルデータを自分のストレージに保存し、自分の所有権にできる形態を指していました。ただし、最近では、自分のPC等のストレージ上には保存せずに、購入した先のサービス上で無期限でコンテンツを楽しめるタイプもESTに含まれているようです。
DVDをネットで購入するのと違い、購入した直後から動画が視聴できます。一度DLしてしまえば、オフラインでも視聴できるため、移動中などでも速度制限を気にせずを動画を楽しめます。
TVOD~レンタル型動画配信~
TVOD(ティー・ヴイ・オー・ディー)とは「Transactional Video On Demand(トランザクショナル・ビデオ・オン・デマンド)」の略で、レンタル型動画配信サービスの意味です。ESTに似ていますが、価格が安価な代わりに、視聴できる期間が1週間など制限があります。つまりESTとTVODの違いは、視聴できる期間に制限が無いかあるかの違いです。TVOD専門のサービスはほとんどなく、ESTなどと組み合わせて使われることが多い形態です。
何度も観返したい作品は購入(EST)、話題作だし一応観ておきたいぐらいの作品であればレンタル(TVOD)という風に使い分けられます。
「完全定額制」と「一部PPV定額」
定額制の「SVOD」と都度課金の「PPV」に分けて解説しましたが、この2つのシステムは完全に別れているわけではありません。現在主流となっている「SVOD」の中にも、全作品が見放題のサービスと、見放題作品とPPV作品が混ざってるサービスがあります。
2015年に日本に上陸した、世界トップのVODサービス「Netflix」は全ての作品が視聴できる「完全定額制」です。しかし、それ以外の「hulu」「AmazonPrimeVideo」「dTV」は月額で全ての作品が視聴できるわけではなく、PPV作品も含まれています。
「SVOD」のデメリットである「最新作品がない」のも、DVDやBlu-rayなどが発売される前の作品を販売する「先行EST」というシステムで補っています。「お金を払ってでも最新映画が観たい」というユーザーは「一部PPV定額制」、「最新作品を観なくてもいいから、追加料金を気にしたくない」という人は「完全定額制」のサービスがオススメです。
コラム:SVODで削減できるのは経済的コストだけじゃない
SVODを利用するか検討する時、その月額料金でTSUTAYAだったらDVDを〇本レンタルできるかを計算して、利用するかどうかを考える人が多いです。確かに、無駄なお金を払いたくないなら、今の映画の視聴状況と照らし合わせて考えることは必要です。しかし、SVODを利用して削減できるのは決してお金の面だけではありません。
例えば「移動コスト」。家にいてふと映画を観たいと思った時も、わざわざ外にでれば移動コストがかかりますし、観なければストレスを感じます。仮にTSUTAYAが帰り道のちょうど途中にあったとしても、作品を探すために店内を歩いたり、レジに向かう移動コストがかかります。
移動コストはネットでの動画配信サービス全てに当てはまりますが、SVODならさらに「悩みコスト」も削減できます。リアルでもネットでも、作品を購入したりレンタルする場合、「この作品面白いのかな?」「こっちとこっち、どっちがおもしいかな?」と悩むと思います。少額とはいえ、視聴して10分でつまらないと気づいてしまっては最悪ですし、無駄なお金も払いたくありません。その点、SVODなら試しに最初の10分を観てから考えても料金が変わらないため、ストレスなく作品を選べるのも魅力です。
SVODには具体的にどんな動画サービスがあるのか気になった方は、13の定額制動画配信サービスをまとめた下記の記事もどうぞ!