2016年に発売されたスマホの中でも、人気機種のiPhone7 PlusとZenFone3。
念願の防水機能が搭載され、Suicaにも対応したiPhone7 Plus。
2種類のSIMを同時に使えるデュアルSIM・スタンバイや高性能カメラを搭載したZenFone3。
「端末によって通信速度に違いがでるの?」と前から疑問に思っていたので、実際に調査してみました。
意外なデータが取れたので、記事にまとめてみたいと思います。
調査条件
iPhone7 PlusとZenFone3は2016年を代表する人気機種。果たしてどんな結果が出るのでしょうか?ワクワクしながら、調査の準備をしました。
なお、調査条件は以下の通りです。
- 調査条件
-
- 調査日時:2016年12月26日 17:40~18:52
- 調査場所:新宿駅構内、伊勢丹新宿本店内の喫茶店
- 使用端末:iPhone7 Plus(SIMフリー版)、ZenFone3
- 使用SIM:IIJmioのタイプA、タイプD
- 調査ツール:Broadband Networking Report Speed Test(画像読み込み版)
- 調査回数:各20回(計160回)
※調査したデータは全て「下り速度」です。
au回線とdocomo回線の両方を使えるSIM「IIJmio」で検証
「iPhone7 PlusとZenFone3を対決させるなら、au回線とdocomo回線で通信速度が変わるかも調べよう」と考えました。
そこで、au回線(タイプA)とドコモ回線(タイプD)のどちらも選べる格安SIMの「IIJmio(アイアイジェイミオ)」を使うことしました。
IIJmioについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
iPhone7 PlusとZenFone3に、IIJmioのau版とドコモ版を差し替えて調査を行いました。
なお、調査にはBroadband Networking Report Speed Test(通称:BNR)というスピードテストサイトを使用しました。なお、速度データは最高速度ではなく、平均速度です。
調査の流れ
どんな感じで調査を行なったのかを写真と共に簡単にご説明します。
新宿駅構内へ移動
調査のため年末の新宿に繰り出しました。人混みが苦手なので、ドキドキしながら新宿へ。
さすがに人が多かったですが、新宿駅東口から近くの地下にある喫茶店にたどり着き、調査の準備。
こんな感じで、iPhone7 PlusとZenFone3を並べて調査を行いました。
スピードを測定すると、測定結果が以下の画像のように表示されます。
↓iPhoneのスピードテスト結果画面▼
↓ZenPhoneのスピードテスト結果画面▼
伊勢丹新宿本店内の喫茶店へ移動
「測定場所は多い方がデータの信頼性が増す」と思い、新宿駅構内から伊勢丹新宿本店内の喫茶店へ移動しました。頼んだエスプレッソが小さくてかわいかったです。
あと、この後ポテトも頼みました。
調査結果
それでは早速、調査結果に入りたいと思います。
生データ(新宿駅)
まずは新宿駅構内のデータです。結果は以下の通りになりました。
iPhone | ZenFone | |||
---|---|---|---|---|
au | docomo | au | docomo | |
1回目 | 5.56 | 2.84 | 2.27 | 4.51 |
2回目 | 6.13 | 2.94 | 4.14 | 3.81 |
3回目 | 5.60 | 2.73 | 3.61 | 4.88 |
4回目 | 6.02 | 1.46 | 3.95 | 2.71 |
5回目 | 6.47 | 2.84 | 4.21 | 2.96 |
6回目 | 5.47 | 2.30 | 4.08 | 2.54 |
7回目 | 5.71 | 2.69 | 4.61 | 2.69 |
8回目 | 6.91 | 2.36 | 4.62 | 3.81 |
9回目 | 6.67 | 2.22 | 5.01 | 3.93 |
10回目 | 7.27 | 2.50 | 4.22 | 5.23 |
11回目 | 6.62 | 1.44 | 3.56 | 3.30 |
12回目 | 6.88 | 2.67 | 4.64 | 6.03 |
13回目 | 5.19 | 2.50 | 1.70 | 2.91 |
14回目 | 4.55 | 1.94 | 3.51 | 4.37 |
15回目 | 6.34 | 2.14 | 3.50 | 5.96 |
16回目 | 7.19 | 2.04 | 5.00 | 3.94 |
17回目 | 7.19 | 2.28 | 4.20 | 2.89 |
18回目 | 6.68 | 2.16 | 5.33 | 2.52 |
19回目 | 6.87 | 2.34 | 2.52 | 3.04 |
20回目 | 6.25 | 1.74 | 4.33 | 2.39 |
平均値 | 6.28 | 2.31 | 3.95 | 3.72 |
中央値 | 6.41 | 2.32 | 4.17 | 3.56 |
生データ(伊勢丹)
続いて、伊勢丹新宿本店内のデータ。結果は以下の通りになりました。
iPhone | ZenFone | |||
---|---|---|---|---|
au | docomo | au | docomo | |
1回目 | 4.30 | 2.47 | 3.21 | 4.91 |
2回目 | 5.62 | 2.14 | 3.38 | 3.61 |
3回目 | 4.40 | 2.19 | 3.39 | 5.09 |
4回目 | 5.94 | 2.42 | 2.99 | 5.49 |
5回目 | 5.64 | 2.27 | 1.72 | 3.62 |
6回目 | 5.80 | 2.58 | 1.74 | 5.03 |
7回目 | 5.27 | 2.31 | 3.11 | 2.37 |
8回目 | 5.44 | 2.15 | 3.10 | 5.62 |
9回目 | 5.31 | 1.80 | 3.29 | 2.66 |
10回目 | 5.55 | 1.92 | 2.60 | 3.04 |
11回目 | 5.90 | 2.06 | 3.64 | 3.58 |
12回目 | 5.30 | 2.15 | 1.87 | 4.29 |
13回目 | 5.56 | 2.22 | 3.45 | 4.00 |
14回目 | 5.61 | 1.96 | 3.23 | 1.46 |
15回目 | 5.86 | 2.15 | 3.11 | 2.19 |
16回目 | 5.71 | 2.09 | 2.95 | 2.95 |
17回目 | 5.75 | 2.04 | 4.00 | 3.36 |
18回目 | 5.64 | 1.93 | 3.57 | 2.55 |
19回目 | 5.56 | 2.02 | 4.74 | 3.28 |
20回目 | 6.46 | 2.39 | 4.54 | 2.90 |
平均値 | 5.53 | 2.16 | 3.18 | 3.60 |
中央値 | 5.62 | 2.15 | 3.22 | 3.47 |
iPhone VS ZenFone
iPhoneとZenfoneに同じSIMを入れて速度に違いが出るのかを調べていきます。
タイプA(au回線版)
iPhoneとZenfoneにIIJmioのタイプA(au回線版)を入れて速度を計測しました。結果は次の通りになりました。
- iPhoneの実測平均:5.90Mbps
- ZenFoneの実測平均:3.57Mbps
- iPhoneがZenfoneよりも全体的に速い
図を見ても明らかなように、タイプAでは20回全てで、Zenfoneに比べiPhoneが速いという結果になりました。
タイプD(ドコモ回線版)
iPhoneとZenFoneにIIJmioのタイプD(docomo回線版)を入れて実速を計測。結果は次の通りになりました。
- iPhoneの実測平均:2.23Mbps
- Zenfoneの実測平均:3.66Mbps
- ZenfoneがiPhoneに比べ全体的に速い
- iPhoneの速度は若干遅いが、安定している
- Zenfoneは速度の振れ幅は大きかった
au回線と真逆の結果になりました。タイプDではiPhoneよりもZenFoneの方が速いという結果に。
au VS docomo
続いて、同じスマートフォンでau回線とdocomo回線で速度に違いが出るかを比べました。
iPhone7 Plus
iPhoneにタイプA(au回線版)とタイプD(docomo回線版)を入れて速度を測りました。新宿駅構内と伊勢丹本店を通して40回の速度計測をしたデータです。結果は次の通りです。
- au回線は安定して5Mbpsから7Mbpsの速度を維持した
- docomo回線は2Mbps台の速度を維持した。ときには1Mbps台を記録した
- au回線とdocomo回線では、速度に2倍近い差が出た
Zenfone3
ZenfoneにタイプA(au回線版)とタイプD(ドコモ回線版)を入れて速度を測りました。新宿駅構内と伊勢丹本店を通してのデータです。結果は次の通りです。
- au回線とdocomo回線で速度に大きな違いは見られなかった
- 平均速度はほぼ同じ
- 最低速度は1Mbps台にとどまった
iPhoneとZenfoneに違うタイプのSIMを入れたことで、速度に違いが出ることがわかりました。特にiPhoneにタイプA(au回線版)を入れた時は安定して5Mbpsから6Mbpsの速い速度が出ました。これだけ速いと動画もスムーズに見れそうです。
箱ひげ図にしてみた
今回の計測結果を「箱ひげ図」にしてみました。箱ひげ図はデータの分布やばらつきを見るための統計グラフです。箱ひげ図の説明は以下を参考になさってください。
箱ひげ図 – エクセルQC館
箱ひげ図に表示しているのは次の4つの組み合わせです。スマートフォンの種類とキャリアの組み合わせによってどれほどの違いが出るのでしょうか?
- iPhone × au回線
- Zenfone × au回線
- iPhone × docomo回線
- Zenfone × docomo回線
グラフから分かることを書いて見たいと思います。
- iPhoneはタイプAでもタイプDでも箱が小さく安定
- ZenfoneはタイプA・Dともに箱が大きく不安定
- iPhone×タイプAの組み合わせは、速度が速い
- iPhone×タイプDの組み合わせは、速度が遅い
- ZenfoneはタイプA・Dに関わらず同じような速度が出る
箱ひげ図を見ると、iPhone×タイプAの組み合わせが、最も安定して速い速度を出せていることがわかります。iPhoneとau回線は相性が良いのでしょうか?
最高・平均・最低速度を比較
それぞれの組み合わせにおける、最高・平均(平均の平均)・最低速度を表にまとめました。
iPhone (au) |
ZenFone (au) |
iPhone (docomo) |
ZenFone (docomo) |
|
---|---|---|---|---|
最高速度 | 7.27 | 5.33 | 2.94 | 6.03 |
平均速度 | 5.90 | 3.57 | 2.23 | 3.66 |
最低速度 | 4.30 | 1.70 | 1.44 | 1.46 |
図にするとこんな感じです。
この図は、スマートフォンと回線の組み合わせごとに最高速度、平均速度、最低速度をグラフ化したものです。この図からわかることを書いてみます。
- iPhone×タイプA(au回線版)は最高・平均・最低速度全てで最速を記録した。
- iPhone×タイプD(ドコモ回線版)は最高・平均・最低速度全てで遅かった。
- ZenfoneはタイプA・Dで速度に大きな違いはでなかった。
- 1Mbpsを下回ることは無かった
- 最高速度はiPhone×auで7.27Mbps
160回の調査において、すべてのバリエーションで1Mbpsを下回ることはありませんでした。1Mbpsという速度は、普通の生活ではインターネットを快適に使用できる速度です。例えば、YouTubeの標準画質であれば1Mbpsで問題なく視聴することができます。
今回の調査の最高速度は7.27Mbpsでした。世界一の乗降者数を誇る新宿駅の構内(地下1階)にも関わらず、快適にインターネットができる速度が出ました。なので、人が多い地下でも快適にインターネットを使えると言えます。
ただし、7.27Mbpsという速度は快適にインターネットが使える速度ですが、auやドコモなど大手キャリアのSIMならもっと速度が出ると思います。大手キャリアで測定した場合は、また追記します。
ケータイ・SIM・ユートピア-通信の正当性とその限界
今回の調査では、「au回線ではiPhone7 Plusが速い」「ドコモ回線ではZenFone3が速い」という結果になりました。詳しい原因はまだ分かりませんが、スマホと回線の相性で通信速度が変わる可能性がありそうです。
中には、「この調査にどんな意味があるの?」と思われた人もいるかもしれません。
今までは端末と回線は同時に契約するのが一般的でした。しかし、SIMフリースマホや格安SIMの登場により、スマホと回線を別々に契約するケースが増えてきています。そんな中、スマホと回線の相性に関するデータを見たことがなかったので、今回自分で調査してみました。
ただ、今回の調査だけでは確定的に明らかな結果が得られたとは言い難いです。よって、より多岐にわたる事例で今後も調査を遂行して参ります。