世の中には似たような言葉は無数にありますが、どちらを使えばいいか迷う人生をかけた局面があります。
私の場合は「ポケットワイファイ(Pocket WiFi)」と「モバイルルーター」です。
さほど気にせず同じ意味で使っていましたが、実はこの二つは厳密には別物です。今回は主に「モバイルルーター」と「ポケットWiFi」の違いを説明し、Pocket WiFiとWiMAXの比較等もしていきます。
「モバイルルーター」は一般名詞、「ポケットWiFi」は固有名詞
「モバイルルータ―」も「ポケットWiFi」も、持ち運びができて屋外でもインターネット接続ができる、小型の通信端末の意味で使われていることが多いです。
その他にも「モバイル WiFi」「モバイルWi-Fiルーター」「ポケットWiFiルーター」も全て同じような意味で使われています。
しかし、一般名詞として正しいのは実は「モバイル(Wi-Fi)ルーター」です。
モバイルルーターとは?という方は下記記事をご覧ください。
では「ポケットWiFi」は何かというと、ソフトバンク株式会社が商標登録している「モバイルルーター」の固有名詞(ブランド名)です。
ポケットWiFiとは?「Pocket WiFi」はソフトバンクの商標
ソフトバンクはHP上で取得している商標一覧を公開しており、その中に「Pocket WiFi」も見つかります。
引用元:商標・登録商標について | ソフトバンク
特許庁のHPで実際に検索してみたところ、「Pocket WiFi」関連の単語で、ソフトバンク株式会社が5件商標登録していました。
- 登録番号:5329146 商標:§PocketWiFi
- 登録番号:5340117 商標:§PocketWiFi
- 登録番号:5508175 商標:§Pocket WiFi LTE
- 登録番号:5738603 商標:Pocket WiFiプラン+
- 登録番号:5850557 商標:Pocket WiFi
※リンク先は特許庁の特許情報プラットフォームです。
実際にソフトバンクモバイルルーターの紹介ページへ行くと、端末の名称には「Pocket WiFi」が付いています。
ソフトバンクのモバイルデータ通信のページ▼
ソフトバンクの「Pocket WiFi」のルーター端末は2020年3月現在「802ZT」しか対応していません。ポケットWiFi事業は以下のワイモバイルに任せているようです。
ワイモバイルも「Pocket WiFi」を使用
ポケットWiFiと言えはソフトバンクよりもY!Mobile(ワイモバイル)の方が有名かもしれません。ワイモバイルは現在ソフトバンク株式会社が運営しています。
ワイモバイルのPocket WiFi(モバイルWi-Fiルーター)の端末紹介▼
ワイモバイルでも、各ルーター端末の名称には必ず「Pocket WiFi」が付いています。
以上のように、「Pocket WiFi」の一つ目の正式な意味として「ソフトバンク株式会社が商標登録しているモバイルルーター端末のブランド名」が挙げられます。
一方で、「Pocket WiFi」はルーター端末名としてではなく、「ワイモバイルのモバイルデータ通信のサービス名・プラン名」としても使われます。
2020年3月現在、ワイモバイルのモバイルデータ通信のプラン名には「Pocket WiFiプラン2(ベーシック)」「Pocket WiFi 海外データ定額」の二つがあります▼
「Pocket WiFi」「ポケットWiFi」の違いと3つの意味
以上をまとめると「Pocket WiFi(ポケットWiFi)」は、以下の3つの意味が混在して使われています。
- Pocket WiFi(ポケットWiFi)の3つの意味
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- 正式な意味①:ソフトバンクが商標を持つモバイルルーター端末のブランド名
- 正式な意味②:ワイモバイルのモバイルデータ通信のサービス名・プラン名
- 一般的に使われる意味①:一般名詞化した「モバイルルーター」「モバイルWiFiルーター」としての意味(本当は間違い)
「オススメのPocket WiFi5選!」みたいなタイトルの記事をよく見かけると思います。そして記事内で「WiMAX」や「無制限系モバイルルーター」が紹介されていることがありますが、本当はこれは正しくはありませんし、ソフトバンクの商標を侵害している可能性すらあるかもしれません。
「オススメのPocket WiFi5選」というタイトルで記事を書けるとしたら、ワイモバイルのPocket WiFiルーター端末のオススメ5機種を紹介することのみです(笑)
ちなみに「オススメの”ポケット”WiFi5選!」というタイトルの記事なら、ライバルのWiMAXを紹介しても、おそらく問題ないと思います。「Pocket WiFi」は商標登録されているが、「ポケットWiFi」は商標登録されてないため。
蛇足ですが、なぜそのような記事が大量にあるかというと、ポケットWiFiが一般名詞化しており(多くの人間が間違っており)、検索キーワードボリュームが大きく、サイト運営者もアクセスを稼げるからです。
以上を再度まとめると、以下のようになります。
- 「Pocket WiFi」「ポケットWiFi」の違いと意味
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- Pocket WiFi:①ソフトバンクが商標を持つモバイルルーター端末のブランド名(厳密に正しい)
- Pocket WiFi:②ワイモバイルのモバイルデータ通信のサービス名・プラン名(厳密に正しい)
- ポケットWiFi:一般名詞化した「モバイルルーター」「モバイルWiFiルーター」(間違いではない?)
なので、KDDI系列のUQ WiMAXやNTTドコモが「Pocket WiFi」「ポケットWiFi」という言葉を使うことはありません。実際に見てみましょう。
UQ WiMAXのモバイルルーター端末名は「Speed Wi-Fi」
まずはUQ WiMAXから。UQ WiMAXはauを運営するKDDI株式会社の子会社「UQコミュニケーションズ株式会社」が運営しています。
UQ WiMAXのモバイルルーター端末製品ページ▼
UQ WiMAXのルーター端末名は「Speed Wi-Fi~」で統一されています。ちなみにUQコミュニケーションズ株式会社も「Speed Wi-Fi」関連の商標をしっかりと登録していました。商標登録番号:第5496485号
ドコモのモバイルルーター端末名は「Wi-Fi STATION」
NTTドコモのモバイルWi-Fiルーターページ▼
NTTドコモは「Wi-Fi STATION~」という端末名で統一されています。また、しっかりと一般名詞の「モバイルWi-Fiルーター」という言葉を使用しています。
ちなみに株式会社NTTドコモも「Wi-Fi STATION」関連の商標をしっかりと登録していました。商標登録番号:第5646676号
以上見てきたように、「モバイルルーター」「モバイルWi-Fiルーター」は一般名詞で、「Pocket WiFi」はソフトバンク/ワイモバイルの固有名詞(ブランド名)です。「Pocket WiFi」は「モバイルルーター」の1ブランドであり、WiMAXが提供している「Speed Wi-Fi」や、docomoの「Wi-Fi STATION」と同列の位置づけとなります。
ポケットWiFiが一般名詞化した経緯と理由
ではなぜ、ポケットWiFiは一般名詞であるモバイルルーターと混同されるほとメジャーになったのでしょうか?
その理由は、初代「Pocket WiFi」である「D25HW」が日本初の無線モバイルルーターとして人気を博したからでしょう。それまでも、PCにUSB接続して使うタイプのモデムはありましたが、2009年に発表された「D25HW」は、無線で使える画期的なモバイルルーターとして注目を集めたのです。
楕円型の筐体に浮かぶ「EM」のロゴに近未来感を感じたものです。
今でこそ当たり前のように使われているモバイルルーターですが、2009年以前のモバイルルーターは1台のPCにしか接続できなかったのです。モバイルルーター1台で複数のPCに接続できるようになったのは、ポケットWiFi「D25HW」のおかげだったのです。
「D25HW」を発表したのは、ワイモバイルの前身である「イーモバイル」。その後、イーモバイルは「ワイモバイル」となり、その後紆余曲折ありましたが、現在「ワイモバイル」はソフトバンク株式会社に吸収されています。そのため「Pocket WiFi」関連の商標登録はソフトバンク株式会社が保有しているのです。
ワイモバイルの「Pocket WiFi」のサ―ビス内容は?料金・制限を解説
もしかしたら「Pocket WiFi」の契約を検討しに、この記事にたどり着いた方もいるかもしれませんので「Pocket WiFi」のサービス内容を簡単に解説します。
ワイモバイルのPocket WiFiの国内プランは「Pocket WiFiプラン2(ベーシック)」というものです。月額料金は3,696円で、毎月の高速データ通信容量は「7GB」です。月のデータ使用量が7GBを超えると、速度が「128kbps」に制限されてしまいます▼
7GBは少ないので、正直これだけでは使い物になりません。そこで重要なのが「アドバンスオプション」です。「アドバンスオプション」を使うと「アドバンスモード」を利用することができ、「7GB/月」の制限が取っ払われます▼
アドバンスオプションの月額料金は684円です。なのでワイモバイルのPocket WiFiの実質的な月額料金は4,380円になります▼
しかしもう一つ問題があります。それは「10GB/3日」という通信制限です。3日間の高速データ通信が合計10GBを超えると、当日18時から翌日1時までまで、通信速度が約1Mbpsに制限されます。
簡単ですが、以上がワイモバイルの「Pocket WiFi」のサービス内容です。しかし、ワイモバイルの「Pocket WiFi」はキャンペーンや特典等が少なく、あまりお得ではありません。
「Pocket WiFi」と「WiMAX」の違い・比較
「Pocket WiFi」とよく比較されるのモバイルルーターサービスに、WiMAXがあります。「Pocket WiFi」とWiMAXの本家「UQ WiMAX」を比較してみましょう。
Pocket WiFi (アドバンスオプション付き) |
UQ WiMAX | |
---|---|---|
回線 | ソフトバンクLTE回線網 | WiMAX回線網(+au LTE回線網) |
月額料金 | 4,380円 | 3,880円 |
通信制限 | 10GB/3日 | 10GB/3日 |
制限後速度 | 約1Mbps | 概ね1Mbps |
通信制限と制限後速度は横並びです。過去にUQ WiMAXがこのような通信制限の緩和を行ったのですが、後々Pocket WiFiもそれに追随した形になります。
大きく異なるのは回線と月額料金です。特に月額料金はUQ WiMAXの方が安く、「ワイモバイルのPocket WiFiはオススメしない」「Pocket WiFiよりWiMAXの方がオススメ」と言われている一つ目の理由です。
さらに、WiMAXは本家「UQ WiMAX」よりもプロバイダと呼ばれる販売代理店から契約するとよりお得になります。キャッシュバックや月額割引があるためです。WiMAXのプロバイダは以下の記事で比較しています。
WiMAXの全プロバイダを比較した結果、WiMAXで最もオススメのプロバイダは「GMO とくとく BB」という結果になりました。「GMO とくとく BB」はWiMAXプロバイダの中で最安で、キャッシュバックが34,800円も貰えます。「GMO とくとく BB WiMAX 2+」の詳細はこちら。
私も大きなこだわりが無いのであれば、基本的にはPocket WiFiよりWiMAXの方がオススメだと思います。
通信制限が無い無制限のモバイルWi-Fiルーターも登場
また、2019年頃からPocket WiFiやWiMAXのような「10GB/3日制限」が無いモバイルWiFiルーターもたくさん登場しており、どんどん台頭してきています。無制限系WiFiモバイルルーターは以下の記事で詳しく比較・解説しています。

まとめ:他社のカウンターで「ポケットWiFiが欲しい」とは言わない
これからは間違っても、ワイマックスやドコモのカウンターに行って「ポケットWiFiが欲しいんですけど」なんて失礼なことを言わないようにしましょう。「モバイルWiFiルーターが欲しいです!」が正しいですよ。
PS. 「ワイファイ」の正式な表記は「Wi-Fi」なはずですが、なぜポケットワイファイの「Pocket WiFi」には「‐」が入っていないのでしょう?知っている方がいたら教えてください。