世の中には「高速データ通信が無制限で使い放題」と謳う格安SIMがあります。もしこれが本当だったら真に強いSIMカード「ツヨシム」として一世を風靡しているはずです。
しかし、実際には「ツヨシム」の名声と評判を得ている特定の格安SIMブランド・プランはありませんよね。なので以下のように思っている方も多いのではないでしょうか。
- 本当に無制限で使えるの?
- 通信速度は遅いんでしょ?
- 実は通信制限あるんじゃないの?
この記事では、データ通信が無制限で使えると謳う格安SIMの実態を調査しました。実際に電話して調査した結果も踏まえ、通信速度や通信制限の条件・内容まで、「無制限SIMの実態」を徹底的に解き明かしていきます。
「データ通信が無制限の格安SIMを探している」「高速通信が使い放題のSIMは結局どこなの?」という方は是非参考にして下さい。
「無制限」や「使い放題」の罠
2020年3月現在で新規契約可能な「データ無制限」や「LTE使い放題」等と謳う格安SIMを調査したところ、以下の格安SIM・プランが見つかりました。
- 【スマホドックモバイル】ギガドック∞無制限プラン
- 【ピクセラモバイル】高速定額SIM
- 【Wonderlink】F-使い放題700,F-7G
- 【UQモバイル】データ無制限プラン
- 【楽天モバイル】Rakuten UN-LIMIT
- (【スマモバ】LTE使い放題プラン)
- (【DTI SIM】LLプラン)
「UQモバイル」「楽天モバイル」「DTI SIM」等の有名MVNOから、「スマホドックモバイル」等、今回の調査で私も初めて知ったMVNOまであります。
これらの格安SIMが本当に高速データ通信(4G・LTE)が無制限で使い放題なのか、各社HPの小さな脚注を隅々まで調べたり、実際に各社に電話して調査してみました。その結果、ほとんどが以下のどちらかまたは両方であることが分かりました。
- そもそも高速通信じゃない
- 「〇日で〇GB使うと低速になる」といった通信制限がある
世の中そんなに甘くありませんね。
「無制限」「使い放題」と謳っていても、ほとんどのSIMが実際には無制限で使い放題ではないのです。「○日間で○GB以上使うと速度が遅くなる」「24時間以内に○GB以上使うと低速になる」などの通信制限があるようです。
高速通信を完全に無制限にしてしまうとコストが割に合わず、MVNO事業者が格安SIMサービスを提供するのが難しくなるので、仕方ないのかもしれません。しかし、制限があるにもかかわらず、「無制限」や「使い放題」と宣伝しているのは、不誠実だと思います。
次の章からは各無制限プランを個別に解説していきます。
【楽天モバイル】Rakuten UN-LIMIT
「Rakuten UN-LIMIT」は2020年4月8日から正式開始の楽天モバイルの新プランです。「Rakuten UN-LIMIT」は格安SIMとは言えませんが、注目度も高く、料金も安いので紹介します。
楽天モバイルはこれまで格安SIM(MVNO)としてドコモ・auから回線を借りてサービスを提供していました。しかし、MVNOとしての楽天モバイルは2020年4月7日で新規受付終了。
「Rakuten UN-LIMIT」は楽天独自の通信回線網を使ったモバイルサービスです。楽天独自の通信回線網は都市部の一部地域に限られますが、楽天回線網であればデータ無制限で利用可能です。
ただし、楽天回線網以外のエリアではデータ容量は2GB/月で、2BB/月を超えると速度は128kbpsに制限されます。
月額料金は2,980円です。今申し込めば1年間無料で利用できます。Rakuten UN-LIMITにの今後には私も期待しています。
ただ、現状は「通信環境は安定していない」との声も多いため、メインとして使うのはまだオススメできません。まずはサブ携帯として試してみることをオススメします。
【UQモバイル】データ無制限プラン
UQモバイルは今回紹介した中で、唯一au回線を使っている格安SIMです。正確にはMVNOではなくauのサブブランドです。
通信速度が500kbpsのデータ無制限プランを提供しています。データ専用で音声SIMはありません。
もともと高速通信じゃないのに、さらに通信制限もあります。
ネットワーク混雑回避のために、直近3日間(0~24時までを1日とし、当日を含む直近3日間の通信量)に6GB以上のご利用があったお客さまの通信速度を制限させていただく場合があります。制限速度は混雑状況に応じて変動します。
速度制限について – その他の料金プラン(UQ mobile)
なおオペレーターさんにさらに詳しく確認したところ、「72時間で6GB以上のデータ通信を行うと通信速度が300kbpsに制限されます。」とのことでした。
- 月額料金(データSIM):1,980円
- 通信速度:下り0.5Mbps、上り0.5Mbps
- 通信速度(制限中):300kbps
- 通信制限:6GB/72時間
- 最低利用期間:なし
- 違約金:なし
無制限プランは微妙ですが、UQモバイルの一般プランは格安SIMの中でもかなりオススメのブランドです。UQモバイルについてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【ピクセラモバイル】高速定額SIM
ピクセラモバイル「高速定額SIM」の公式サイトには「データ通信使い放題」と宣伝されています▼
しかし、直近3日間で3GB以上の通信を行うと、通信速度が200kbpsに制限されます。
直近3日間のデータ利用料合計が3GBを超えた日の翌日午前1時から24時間、通信速度が低速化されます。(送受信時最大200kbps)
帯域制限について – 製品仕様 – ピクセラモバイル
ピクセラモバイルの「高速定額SIM」はデータ通信専用SIMです。音声SIMは用意されていません。データSIMにもかわらず、最低利用期間が設定されており、違約金の請求額の計算方法が特殊です。
- 月額料金(データSIM):1,980円
- 月額料金(通話SIM) :なし
- 通信速度:下り262.5Mbps、上り50Mbps
- 通信速度(制限中):200kbps
- 通信制限:3GB/3日間
- 最低利用期間:6カ月
- 違約金:(6-契約月数)×1,980円
【スマホドックモバイル】ドコモ 無制限SIM
スマホドックモバイル
スマホドックモバイルは、パソコンやスマホの修理事業を行なっている株式会社スマホドック24がサービスを提供しています。
記事公開時の2017年9月は「スマホドックモバイル」の「ギガドック∞無制限プラン」を完全無制限の唯一のツヨシムとして紹介していました。その影響もあってか?実は「かなりユーザーが増えた」とスマホドックモバイル運営から連絡も頂きました。
当時は実際にかなりオススメのサービスでした。価格.comでも2017年12月には以下のような口コミも見られました。
過去最高無制限SIM
あまりおしえたくないですがスマホドックモバイルつかってます。自分経験上過去最高SIM紹介します。速度あまり早くないけど安定してます。スマホドックモバイルだけはほんとに無制限です。やく1.65TB使っても制限ありませんでした。かなりやばい31日で2TBいくおもいます
『過去最高無制限SIM スマホドックモバイル』 のクチコミ掲示板
しかし現在はユーザーが増えすぎたのか?Twitter上では速度はかなり遅いとの口コミがたくさんあります。
去年もそうだったけどお盆過ぎからスマホドックモバイルのドコモ回線酷すぎ。LTE回線のくせにMbpsどころかKbpsを割り込む事もありwebページ閲覧だけでもやたらと読み込むのに時間がかかり画像は表示されないのも多い。去年もこの時期に解約を考えていた。月が変わったらマシになるのか?
— 鈴木 (@8U2UK1) August 22, 2019
スマホドックモバイルの測定結果
Ping値: 48.0ms
ダウンロード速度: 0.52Mbps(非常に遅い)
アップロード速度: 2.63Mbps(かなり遅い)https://t.co/k3Zz1xqvFq #みんなのネット回線速度— 黒うさぎ@学園革命スクレボ@王国民 (@minto0774) March 22, 2020
みんなで通信速度を計測・共有するサービス「みんそく」でも、下り速度が1Mbpsを切っており、かなり速度は遅いというデータが出ています▼
スマホドックモバイルのHPのタイトルは未だに「【公式】スマホドックモバイル | LTE使い放題、無制限の格安SIM!」と強気です。
HP上にも一応「ドコモ無制限SIM」とあるので、サービス終了はしていないようですが、HPの中身は昔のようなやる気は感じられません。「ギガドック∞無制限プラン」も見当たらなくなりました。
なお、音声SIMの最低利用期間は1カ月となっていますが、1カ月以内に解約しても違約金は発生せず、1カ月目の月額料金が請求されるだけのようです。良心的ですね。
- 月額料金(データSIM):4,380円
- 月額料金(通話SIM) :なし?
- 通信速度:下り375Mbps、上り50Mbps
- 通信制限:なし?
- 最低利用期間:1カ月
- 違約金:0円
【Wonderlink】F-使い放題700
Wonderlinkは、家電メーカーのパナソニックが提供している格安SIMです。データSIMのみ選択できます。「F-使い放題700」という無制限っぽい名前のプランがあります。
しかし実際の中身は、使える高速通信データ量はたったの毎月1GB。高速通信データ量「1GB」を使い切ると通信速度が700kbpsになります。
速度制限時の速度としては「700kbps」はまあまあかなと思いきや、「700kbps」状態でも24時間以内に1GB以上の通信を行うと、さらなる制限がかかる可能性があります。
※月間容量制限を超えなくても、直近1日(24時間)の通信量が1GBを超過した場合は、ネットワークの状況により速度制限をする場合があります。
通信速度制限(集中利用規制) – LTE Fシリーズ – Wonderlink
通信制限後の速度については、オペレーターさんに確認してみましたが「回線の通信状況によるので、明確な数字はお伝えできません」とのこと。
「700kbps」を約束してくれるなら絶対無いって訳じゃないけど、そこからさらに制限がかかる可能性があるのは正直厳しいですね。
- 月額料金(データSIM):1,580円
- 月額料金(通話SIM) :なし
- 通信速度:下り0.7Mbps、上り0.7Mbps
- 通信速度(制限中):非公開
- 通信制限:1GB/24時間
- 最低利用期間:0カ月
- 違約金:0円
【DTI SIM】毎日1.4ギガ使い切りプラン
DTI SIMにはかつて「ネットつかい放題」というプランが存在していました。高速データ通信が使い放題のプランです。
しかし、2019年12月12日に「ネットつかい放題プラン」は無くなり、「毎日1.4ギガ使い切りプラン」へとサービス内容が変更されています▼
なので現在は「無制限」と謡っている訳ではありません。
「毎日1.4ギガ使い切りプラン」は、1.4GB/日使うと速度が200kbpsに低下します。制限は翌日0:00に解除されます。
- 月額料金(データSIM):2,200円
- 月額料金(通話SIM) :2,900円
- 通信速度:下り500Mbps、上り50Mbps
- 通信速度(制限中):200kbps
- 通信制限:1.4GB/1日
- 最低利用期間:12カ月(音声プランのみ)
- 違約金:9,800円(音声プランのみ)
【スマモバ】LLプラン
スマートモバイル(通称:スマモバ)にはかつて「LTE使い放題プラン」というプランがありました。しかし現在「LTE使い放題プラン」はHP上でも見当たらないので、新規契約はできないと思われます。
代わりに、データ専用の「LLプラン」というのが出ています。「LLプラン」はソフトバンク回線を利用した毎日3GBまでは高速通信できるプランです。
3GB/日を超えると制限がかかり、制限は翌日深夜0時に解除されます。制限後の速度は明記されていませんが、ソフトバンク回線の制限速度は一般的に128Kbpsです。
HP上でも特に「無制限で使い放題」等と謡っている訳ではありません。
- 月額料金(データSIM):4,480円
- 月額料金(通話SIM) :なし
- 通信速度:下り225Mbps、上り50Mbps
- 通信速度(制限中):128kbps?
- 通信制限:3GB/日
- 最低利用期間:24カ月
- 違約金:9,800円
新規受付が終了した過去の無制限SIM達
この記事で紹介した以外にも、過去にはデータ通信が無制限の格安SIMカードが、以下のように他にもありました。しかし、2020年3月時点では新規受付が終了しているので、申し込みができません。
- 【ぷららモバイルLTE】定額無制限プラン
- 【YAMADA SIM PLUS】使い放題
- 【ワイヤレスゲートSIM】Fon プレミアム Wi-F
- 【モバレコモバイル】超高速独占・超激安激混プラン
- 【b-mobile】高速定額
- 【U-mobile】LTE使い放題
- 【DTI SIM】ネットつかい放題
- 【スマモバ】LTE使い放題プラン
- 【@モバイルくん。】3G使い放題プラン
- 【楽天モバイル】スーパーホーダイ※2020年4月7日新規受付終了
ネットでは「ぷららモバイルLTEいいよ」「ヤマダの無制限SIMおすすめ」等の古い口コミ・評判も見られますが、これらは過去のものです。もう契約できません。今日を機に、これ以上探すのはもうやめましょう。
データ通信が無制限の格安SIMの注意点2つ
データ通信が無制限のSIMを契約する前に、覚えておきたい注意点は以下の2点です。
- 実際の通信速度は数Mbps~数十Mbps
- 制限の解除は時間が経つのを待つしかない
注意点①実際の通信速度は数Mbps~数十Mbps
これは無制限プランに限った話ではなく格安SIM全般の話ですが、各社の最大通信速度225Mbps~等と書かれていますが、あくまでもこれは理論値です。
4G・LTEでも、実際の通信速度は速くても数十Mbps、だいたい数Mbps~十数Mbps程度です。通勤時やお昼や夕方になると1Mbpsがでないこともあります。
なので「高速通信無制限」の甘い言葉に期待しすぎるのは程々にしておきましょう。
注意点②通信制限の解除は時間が経つのを待つしかない
格安SIMの無制限プランで通信制限にかかった場合、通信制限を解除されるまで時間が経つのを待つしかありません。
例えば、3日間で3GB以上使うと通信制限がかかる場合で、1日に3GB以上の通信を行った場合、通信制限が解除されるのは4日後です。その間の中3日間は低速のまま過ごすことになります。
通常のプランなら高速通信を使い切って通信制限を受けても、高速通信量をチャージすれば直ぐに高速通信が使えます。(つまりお金で解決できます。)
しかし無制限プランだと多くの場合、高速通信データをチャージできません。せっかく、データ通信が無制限の格安SIMを契約しても速度が遅い状態で待つ必要があるのは不便ですね。
【参考】モバイルWiFiルーターならデータ通信無制限がある?
格安SIMから少し話はそれますが、世の中にはデータ通信無制限を謳う「モバイルWiFiルーター」もあります。2019年頃から増え始め、数十社以上が無制限モバイルルーターサービスを提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。

モバイルルーターと言えば、かつてはワイモバイルの「Pocket WiFi」か、UQコミュニケーションズの「WiMAX」が有名でした。
「Pocket WiFi」の詳細はこちらをご覧ください。
「WiMAX」の詳細はこちらをご覧ください。
しかし、2019年に無制限系モバイルルーターが登場し、実際に契約したユーザーからも「月1,000GB以上使ったけど全く制限がかからない」等の口コミも出てきました。「完全無制限」というのは、当初はかなり革命的なサービスだったので、多くの人が徐々に使い始め、モバイルルーター界で台頭し始めてきました。
しかし、2020年になり、結局「完全に無制限ではない」「一定期間にある程度使うと速度制限を食らう」「月に300GB以上使うと制限がかかる」等、実査は完全無制限ではないことが露呈し始めました。
これらは、「人気が出るとユーザーが増え、全ユーザーのデータ使用量の合計は増大し、回線側から制限をかけられる」ということを意味し、「データ無制限の通信サービスが永続するのはほぼ不可能」であることを決定づけました。
とはいえ、これまで見てきた格安SIMの無制限プランや大容量プランよりは、モバイルルーターサービスの方が、圧倒的に制限は緩く多くのデータ量が使えるのは事実です。興味がある方はモバイルルーターも検討してみましょう。
ただ、5Gが本格的に普及すれば、完全無制限プランが可能になる時代が来るかもしれません。
まとめ:無制限プランはビジネスモデルとして成り立たない?
格安SIM(MVNO)事業者はMNO(キャリア)に回線使用料を支払って格安SIMサービスを提供しています。
「ぷららモバイルLTE」「YAMADA SIM PLUS」といった無制限プランとしてかつて有名だった格安SIMも次々とサービスを終了しています。
また、とあるMVNOの中の人は「無制限プランを提供している会社は理解できない」と言っていました。高額な回線使用料を考えると無制限プランはビジネスとして成り立たせるのは難しいかもしれません。
今回紹介したサービス達もいつ新規受付が終了するか分かりません。そして、新しい通信規格5Gが出た時に各社のプランがどうなるのかも注目ですね。
こちらの記事では電話が「無制限かけ放題」の格安SIMをまとめています。
こちらはクレジットカードが不要で契約できる格安SIMをまとめています。
こちらの記事では、結局どれを選んだらいいか分からないという方のために、おすすめの格安SIMを厳選して紹介しています。